「神人」第14号(2004年10月)より
(20)
「この間、音楽会に行ってね」とエミール・ギレリスのピアノ演奏について、お話し下さったことがあった。
ギレリスは弾いているうちに自分がなくなってしまう。先生がごらんになると、なんとリストが弾いていた。
「私は感動して涙が出た。美しい女性がハンカチでそっと目頭をおさえる、なんていうのはいいものだけれど、私のは手拭だ。大の男が手拭でグシャグシャ涙をふいているなんぞは、サマにならないよね、ハハハ……」とお話しになった。
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ある女性の方が「私は消えてゆく姿というのが何だか難しくて、なかなか出来ないんでございますけど……」と云い出されたことがあった。先生は、じっとその方を見てから、
「そうね、あなたなんかは"神さま有難うございます"でもいいね。何があっても神さま有難うございます、と云えるようになればいい」とおっしゃった。
はたでこれをお聞きした私は、いいことを伺った、そうだ、私も神さま有難うございますで行こう、その方がラクだ、と思った。
ところが、それは誤算だった。数日後、何かがあった時、それに気づいたのである。神さま有難うございます、と言葉では云えないこともないが、その時の想念は、全くそれについて行けなかった。
「あゝ過去世のものが今消えていった。消えてゆく姿、世界人類が平和でありますように、神様有難うございます」という想いの経路を経て、はじめて有難くなれた。
神様の大きな赦しである「消えてゆく姿で世界平和の祈り」というみ教えの重要さ、有難さが身にしみてわかった時であった。
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「自分がないのが一番いいね。自分の立場とか自分の面目とか、私なんかそんなもの何もないからね、ラクなもんだ」
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「"消えてゆく姿"というのは、自分に対して使うんです。人を責めるように"それが消えてゆく姿でしょ"などと使うものではない」
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「金星は地球の兄貴星。世界平和を祈っている人達というのは、金星が今の地球と同じような状態の時に、金星にいて、それを救うために働いた経験のある人達がほとんどです」
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「個性と性癖とは違う。性癖は業で消えてゆくもの。個性はあの世へ行ってもつづく魂の色あいと云える」
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「同じ会員と云っても、皆働き方が違う。人はそれぞれ個性が違うからである。おおまかに三通りある。
祈ることによって世界平和に尽す人。
人に話すことを主として世界平和に尽す人。
行ないを通して世界平和に尽す人。
誰でもこの三つを持っているのだが、その中で最も強く現われているものがある。それは人の働きのあり方である」
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「人って面白いもんでね。
こうして見ていると、大きく働いていそうな人が、意外に敵が多くて大したことなく、目立たなくて一見、大した働きをしていないような人が、案外、敵もなくて影響力が大きい、ということもあるんです」
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「神経は先が細く鋭く、そして根元は図太くというのがよい。
繊細ですぐにヘナヘナしてしまうようでは困るし、かといって鈍感で細やかさが何もないというのも困る」